初枝さんのお弁当⑥

タイミングを外した理由が必要だった。 おかずの蓋を閉じるちょっとした必然が欲しかった。 しかし、どこをどう探しても見つからないからいつものように思考停止に陥ってふらふらと追い詰められている。 むしろその後を想像しながら薄… 続きを読む 初枝さんのお弁当⑥

初枝さんのお弁当⑤

最後尾である自分の席にあらためて感謝した。 クラスの半分が学食に行った頃に僕は胸の高鳴りを深呼吸して静めながらゆっくりとそれを机の上に置いてみた。意外にもなかなかどうして安定感がある。 というのもその朝、布製で白と紺色の… 続きを読む 初枝さんのお弁当⑤

初枝さんのお弁当④

上陸して勢力を落としたその円形は左カーブを描いて逸れている。 「大丈夫ですね、もう大丈夫でしょう」そう言ってお婆ちゃんを振り返った。 「飛行機は飛ぶのかな?」心配そうな様子をしている彼女はずっと画面をみている。 「息子さ… 続きを読む 初枝さんのお弁当④