舞台上のスタンドマイクの前にぽつんと立って聴衆の拍手の音をずっと聞いている。膝が震えだし前屈みになり視線は後方から照らされて作りだした自身の影法師にむいていた。
はたして僕は今、何をしようとしているのかが理解できないでいる。
発すべき言葉は喉の奥に見え隠れしている。
身体が折れ曲がるほど緊張しているのだが頭が真っ白で言葉が出ないのでは決してない。
見え隠れしているセリフは口にすると震えてしまい言葉にならず目の前の人々には届かない事が想像できる。これ以上の醜態をさらけ出すことが怖くなっている。
小学生の頃に朝礼で貧血になり倒れこんだ事を思い出していた。
いっそ倒れこんでしまったほうが楽になるはずだ、しかし意識ははっきりとしていて最早どうしようもない。
しかし、このままでは更に脱却出来ない状況になってしまう
なす術がないこの自分が作りだした空間に、ただ震えている。
拍手の音がやがて雨音に被さっていく。
開け放した窓枠の隙間から入り込んだ雨粒が頬を打っている。
アルコールに逃げた僕をその安楽な地にまでも追いかけて来て現実に引き戻しに来たのだ。
「やらないといけないでしょう、部長のいう事は僕も納得できませんよ。主任がまとめて課長に進言するべきだと思います」